シャドーイングも音読も「自分自身で声を出すトレーニングの一種」であり、英語の習得に非常に効果的であると言われています。
結論から言うと、非常に効果が高いのでぜひ取り入れて欲しいと私は思っています。
今回は、そんなシャドーイングと音読について、概要と効果をまとめてみました。
よろしければご覧ください。
目次
シャドーイングとは?
シャドーイングとは「聞き取った英語音声のあとを、ほんの少しだけ遅れて自分も発声するトレーニング方法」のことです。
聞き取ったものを、その場でオウム返しするイメージです。
イントネーションや発音など、全てそのままそっくりコピーするイメージで取り組みます。
↑上記の高杉尚孝氏の動画は、非常にわかりやすいです。
このシャドーイングを行う際は、意味の理解までしようとする必要はありません。
単純に、聞いたまま真似してすぐに発声すればよいです。
シャドーイングの3つの効果
1つ目の効果:リスニング力が向上する
シャドーイングの1つ目の効果は「リスニング能力の向上」です。
真似して発音する為には、まずしっかりと聞く必要があります。
英語の音をそのままま英語の音として取り込むことができるようになり、リスニング力アップに繋がります。
例えば、「It takes about an hour」という文章。
"この文章を声を出して読んでください"と言うと、日本語発音になれた何も学んでいない丸腰の日本人であれば「イット テイクス アバウト アン アワー」と発音してしまうでしょう。
しかし、実際には上記のようには発音されていません。
あえて無理やり日本語で表記すると「イッテイクス アバウラアンナワー」のように発音されています。
It takes about an hour.
シャドーイングでは、聞こえたまますぐに発声します。
ですので、下記のようなプロセスを行う時間がありません。
- It takes about an hour.を聞き取る
- えーと、it takes about an hourだから、つまりイット テイクス アバウト アン アワーだ!
- イット テイクス アバウト アン アワーと発音
自分の思い込んでいる日本式発音へすり替える時間がないので、聞いたまま真似して発声することになります。
英語の音を日本式に変換せずそのまま取り入れることができるようになり、リスニング力が向上します。
これがシャドーイングの1つ目の効果(メインの効果)です。
2つ目の効果:学習項目を記憶へ深く定着させる・暗記効率がアップする
シャドーイングの2つ目の効果は、使っている音声に出てくる語彙や文法を、自分の中に深く定着できることです。
脳に深く刷り込み、長期的に記憶することができるようになります。
例えばですが、メモなしで伝言を頼まれた時、心の中で何回も唱えて忘れないようにした事は無いでしょうか?
忘れないために、何回も唱えた事、きっとあると思います。
この自分の中で繰り返し唱えることを「内語反復」といいますが、これを繰り返すことでその内容を長期記憶に移行することが可能になります。
つまり、より長い期間暗記しておく事ができるようになります。
伝言程度であれば、伝えた後忘れてしまっても良いですが、英単語や英文法は忘れたくないですよね。
シャドーイングは、この「心の中でとなえる」という作業を、声に出して行うのと同じことです。
「声を出す」という、心の中で唱えるだけよりもはっきりとした形で反復することになるので、記憶をより一層深めることができます。
3つ目の効果:発音の練習になる
シャドーイングを用いて単語や例文の暗記をすると、語彙力を伸ばせるだけでなく、その過程で発音の練習もしている事になります。
ですので、実践的な英会話の学習に移ろうと思った際にスムーズに移れます。
同じTOEIC800点の人でも、シャドーイングもやってきた人と、ただリスニング学習をしてきた人では、会話力のベースが違います。
- 相手の言った事を聞き取る力
- 頭の中で言いたい文章を組み立てる力(もしくは反射的に暗記しておいたフレーズ思い出す力)
- 実際にスムーズに発声する力
会話力というのは、まとめると上記の3要素になりますが、3つめの能力に関してはシャドーイングや 音読をメインに学習してきた人に大きなアドバンテージがあります。
このアドバンテージは、意外と大きいです。
実際、私は最高点がTOEIC840の時にニュージーランドとフィリピンへ短期留学しました。
留学先には、私と同じくらいのTOEICスコアを持った人も何人かいました。
しかし、その人達はあまりにも会話に難がありました。
私の会話力も大した事無いのですが、そんな私以上に喋るのに苦労しているようでした。
結局、最終的に会話力も欲しいなら、シャドーイングや音読もうまく取り入れて学習するのが私のオススメです。
シャドーイングの注意点
シャドーイングトレーニングは、音源だけでも実施は可能です。
しかし、答え合わせを考えるとテキスト(スクリプト)も用意されている素材を使って行う方が良いでしょう。
また、理解できていない文章をシャドーイングしても、あまり意味はありません。
- 意味が理解できるレベルの文章で実施する
- 1回理解した内容を、より深く暗記したい時に実施する
というやり方が良いでしょう。
シャドーイングに特化したアプリ教材
シャドーイング自体は、音源と答え合わせ用のテキストさえあればどんな英語素材でも行えるトレーニングです。
ただ、自分のレベルにあった教材を探すのが面倒だったり、添削して欲しいという方もいるでしょう。
そういった方は「シャドテン」という、英語コーチングスクールで有名な英語学習コンサルティング【PROGRIT(プログリット)】 が運営するシャドーイング特化型のアプリ教材を試してみるのも良いでしょう。
- シャドーイング用教材は、TOEIC音源からハリウッド俳優まで、300以上用意されている
- 登録時に「リスニング力診断」が実施され、その結果に合わせておすすめ教材が推薦される
- ビジネス英語のプロから毎日フィードバックが届く
という感じで、シャドーイングをベースに英語トレーニングができます。
7日間の無料体験期間もあるので、気になる方はまず実際に試してみると良いでしょう。
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音読とは?
いうまでもないと思いますが、音読とは文字や文章を声に出して読むことです。
英語の習得にも効果があると言われています。
音読の効果
シャドーイングと同様に「声を出す」という、心の中で唱えるよりもはっきりとした形で反復することになるので、記憶をより一層深めることができます。
テキストの意味理解をしつつ音読を行うことで、テキスト内の語彙や文法項目などを長期的に深く記憶するのに役立ちます。
音読の注意点
音読する前には、テキストの内容理解が完了している必要があります。
理解していない文章を音読しても、あまり意味はありません。
1回理解した内容をより深く暗記したいときに使いましょう。
その他の音読系トレーニング
上記のシャドーイングと音読以外にも、音読系のトレーニングは色々あります。
全部あげても大変なので、使えそうなものをまとめます。
マンブリング
マンブリング(mumbling)は、口の中で、もごもご小声で行うシャドーイングのことです。
いきなりシャドーイングすることが難易度的に難しい教材を利用する場合、その前段階として用いられる方法です。
個人的には前段階として以外にも、大きな声を出すと恥ずかしい電車内とか駅構内とかで使っていたりします。
パラレルリーディング
パラレルリーディングは、テキストを開き音声を聞きながら音読をする学習法です。
シャドーイングとは異なり、テキストを見てOKです。
また、音声と同時に自分も発声します。文字で表現すると下記のようなイメージになります。
教材の音声:I like to play soccer.
自分の発声:I like to play soccer.
私はパラレルリーディングを、音読の効果(つまり「学習項目を記憶へ深く定着させる効果」)を高めるために用いることが多いです。
たとえば、語彙習得時には、DUO 3.0などの例文型単語集を丸暗記する作業を行うことがよくあります。
この手のトレーニングを行う際はどうしても未知の単語が多くなるため、テキスト自体の難易度が自分のレベルを大きく上回っていることが多いです。
難易度が高い教材をシャドーイングする事は負荷が高すぎて、うまくいきません。
こういう場合にはパラレルリーディングを使うのが良いですね。
私自身、昔はDUO3.0を利用して語彙力を高めましたが、パラレルリーディングを多用しました。
特に初心者の方は、テキストを見ながらでないと難しいと思います。まずは見ながらやると良いでし。
なお、このパラレルリーディングは、人により呼び方が様々です。
「シンクロシャドーイング」「テキストシャドーイング」「オーバーラッピング」と呼ばれるものは、このパラレルリーディングと同じ内容です。
コンテンツシャドーイング
このコンテンツシャドーイングは、その名前の通り内容(コンテンツ)を理解しながら行うシャドーイングのことです。
シャドーイングでは「聞いてすぐそのまま発声するだけ」だったので、文章の内容を理解しているかどうかは気にしていませんでした。
しかし、このコンテンツシャドーイングはそれに加えて文章の内容を理解する必要があります。
もちろん難しいので、通常のシャドーイングが十分できるようになってから総仕上げ的に行います。
負荷が高く難しいので、初心者はやる必要がありません。
ただし、そもそもリスニングというのは理解できてなんぼ、というところもあるので、余裕があればやってみるのも良いでしょう。
リピーティング
リピーティングは「一定量の分量の音声を聞き、その後十分な時間(ポーズ,小休止)をとった後、聞き取った音声をリピートするトレーニング」のことです。
ざっくりいうなら、とても間の空いたシャドーイングのことです。
文字にすると、下記のイメージ。
教材の音声:I like to play soccer.
自分の発声:(聞いた後しばらく待機して) I like to play soccer.
リピーティングの効果
シャドーイングと違い、音声を聞いた後に一定の時間を取ることにより、その間に文の構造や、意味を理解しようとします(統語・意味処理)。
これにより、文法や語彙などの知識を身につける(=長期記憶に入れる)のに役立つと考えられます。
音読系トレーニングを取り入れる前にやっておくと良いこと
発音を学ぶ
シャドーイングや音読を行う際は、音声をできるだけ真似して発音することになります。
しかしながら、真似するだけで似たような発音を行うことは、大人の日本人にとってなかなか難しいのが実情です。
真似だけで正しい発音を行うには限界があります。
赤ちゃんのように聞いて聞いて聞きまくって真似すれば良いみたいな考え方もありますが、大人になってからではもうそんな能力は無いです。
1つ1つの発音記号に対する発音の方法を学んでから、シャドーイングしていった方が効率的です。
英語の音には「LとR」や「th」など、日本語にはない音が含まれているので、まず事前にそれらにどういう違いがあるのかを学ぶことが重要です。
違いを学んだ後に真似することで、やっとそれなりの発声ができるようになります。
発音を学ぶ前にシャドーイングをしても、変な発音の癖等が身につく危険性もあります。
ですので、まずやる前にひと通り発音は学ぶべきです。
下記でおすすめの発音学習本やウェブサイトを紹介しているので、よろしければご覧ください。
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英語の発音や発音記号が学べるおすすめ本・サイト・Youtube動画まとめ
音の脱落規則(リエゾン)を学ぶ
シャドーイングを行うことで、リスニング力が向上します。
上にあげた例でいうと、シャドーイングをおこなうことで「It takes about an hour」の音は、「イット テイクス アバウト アン アワー」ではなく「イッテイクス アバウラアンナワー」だとわかるようになります。
こういう経験をたくさん積むことで、英語の音が理解できるようになってきます。
でもこれはよく考えると「たくさん聞いて自分自身で音の変化の法則を導きだせ」と言っているのと同じではないでしょうか。
時間をかければいいのでしょうが、時間がもったいないと思います。
実は音声変化にはある程度法則があるので、それを学ぶとかなりショートカットできたりします。
別エントリーで、音声変化の法則についてまとめた記事を書いたので、ぜひ読んでみてください。
-
英語の音声変化の総まとめ【音源、イラスト付】
まとめ
シャドーイングなどの音読系トレーニングは効果が高く、個人的にもよく取り入れる学習法なので、ついつい記事が長くなってしまいました。最後に簡潔に内容をまとめておきます。
シャドーイングと音読のまとめ
用語まとめ
- シャドーイング:聞いてすぐに全てを真似してオウム返しする学習法。リスニング力が向上する。声を出す、というはっきりとした形でテキストを反復することになるため、学習項目を記憶へ深く定着させるのに役立つ
- 音読:シャドーイングと一部は同じ効果。声を出す、というよりはっきりとした形でテキストを反復することになるため、学習項目を記憶へ深く定着させるのに役立つ。
- マンブリング:口の中で、口の中で、もごもご小声で行うシャドーイング。シャドーイングが難しい場合の事前段階に使用。
- パラレルリーディング:テキストを開き、音声を聞きながら行う音読のこと。音声と自分の発声は同じタイミング。私は「学習項目を記憶へ深く定着させる効果」を高めるために用いることが多い。
- コンテンツシャドーイング:内容(コンテンツ)を理解しながら行うシャドーイングのこと。意味を考える必要がなかったシャドーイングと違い、内容を理解する必要があるため難しく負荷が高い。通常のシャドーイングが十分できるようになってから総仕上げに。
- リピーティング:一定量の分量の音声を聞き、その後十分な時間(ポーズ,小休止)をとった後、聞き取った音声をリピートするトレーニング。音声を聞いた後に一定の時間を取ることにより、文の構造や意味を理解しようとする(統語・意味処理)。これにより、文法や語彙などの知識を身につける(=長期記憶に入れる)のに役立つ。
シャドーイングと音読の効果まとめ
シャドーイングの効果は下記のとおりです。音読の効果は下記の「2と3」です。
- リスニング力が向上する:真似して発音する為には、まずしっかりと聞く必要がある。英語の音をそのままま英語の音として取り込むことができるようになり、リスニング力アップに繋がる。
- 学習項目を記憶へ深く定着させる・暗記効率がアップする:「声を出す」というはっきりとした形で反復することで、記憶をより一層深める
- 発音の練習になる:シャドーイングをするというのは、常にネイティブ音声の真似をして発音練習をしているのと同じ。英会話移行時にもアドバンテージがある。
シャドーイングはリスニング力も上昇。暗記効率もアップ。英会話力ベースも作れます。
ぜひ活用すべき勉強法です。
注意点としては、1回理解した文章でやる必要があるというところ。
理解していない文章をシャドーイングしても、あまり意味はありません。
1回理解した内容を、より深く暗記したいときに使いましょう。
実際にシャドーイングを行ってみると分かりますが、はじめは口がまわりません。
もどかしい気持ちになります。
自分もそうでした。
しかし、練習を続けるうちに、どんどん口が回るようになります。
挫折しないで、頑張ると良いです。
音読やシャドーイングをする前にやっておくと良いことまとめ
- 発音:変な癖をつけないために、正しい音を出すため、学ぶべき知識。
- 英語の音声変化:英語は文章になると、音が連結したり脱落したりと発音が変化する。この音変化の規則を事前に学ぶことで、音のデータベース作成時間をショートカットできるため効率的。
サイト内のおすすめ関連記事も下記にまとめますので、よろしければお読みください。
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参考文献
専門的な内容で書かれており論文のよう。専門用語がバンバンでてきて、非常に理解が難しいです。
内容的には面白いのですが、一般的に英語学習をするような人が読んでいて楽しいか?理解できるのか?という点は疑問視される書籍です。
もし「音韻ループ」「ワーキングメモリ」「メンタルレキシコン」「音声知覚」「自動化」「中間言語」「内語反復」「外語反復」のような語句を見て、楽しそうとか面白そうとか思えるのであれば、一読の価値はあると思います。
実は本エントリーは、この書籍を自分なりにわかりやすく噛み砕き、そこに自分自身の学習経験をプラスアルファーしてできあがったものだったりします。
より深くシャドーイングと音読について知りたいなら一読の価値があるので、読んでみると良いでしょう。