「英語を上達したいけど、どのように学習を進めていったら良いのかよくわからない」
「英語学習ブログなどで、上級者の勉強法や体験談を真似してみようかと思うけども、本当にこれで良いのか不安」
このような思いの英語学習者は多いのではないでしょうか。
そんな人には、一度「第二言語習得論(SLA, second-language acquisition)」を参考に、勉強法を考えてみることをオススメします。
詳しい理由を、本記事では解説してみたいと思います。
目次
そのそも、第二言語習得論(SLA)って何?
第二言語習習得(SLA, second-language acquisition)とは、第二言語が習得されるのはどのようなメカニズムによるのかを科学的に明らかにする学問のことです。
ここでの第二言語というのは、児童期の初期以降に習得し始める言語のことを言います。
つまり、日本で生まれ育った普通の日本人にとって、英語は第二言語になります。
このような「第二言語」を「人間はどのように習得していくのか」「どのようにしたら習得できるのか」ということを、言語学、心理学、認知科学などの成果と連携しながら科学的に研究している学問が「第二言語習得論」です。
比較的新しい研究分野で、1960年代に始まったと言われています。
第二言語習得論(SLA)をベースに勉強方法を組み立てるべき理由
英語学習ブログなどで書かれているのは、基本的には個人の体験談です。
「自分はこのように学習したら、TOEIC400から600になった」など、あくまでも体験ベースに書かれています。
もちろん参考にはなりますが、根拠や科学的な証明はありません。
一方、第二言語習得論(SLA)というのは、学問です。
きちんと論文もあり、科学的な根拠があります。
第二言語習得論を学んだからと言って、直接的に英語力が伸びるわけではありません。
しかし、効果的な学習方法を知ることはできます。
第二言語習得論という科学と研究の成果に裏打ちされた理論をベースに勉強法を組み立てる事で、効率的に短期間で英語習得をできるようになるでしょう。
あと、たまにネイティブスピーカーに英語学習方法を聞く人がいたりしますが、あれは論外なのでやめた方が良いです。
彼らは、小さい頃からただ母国語環境で育ったから英語ができるだけ。
勉強法なんて知りません。
日本人のあなたは海外の人に「どうやって日本語を勉強したら良いの?」と聞かれたら答えることができますか?
日本語教師としての教育を受けていない限り、できないですよね。
そういうことです。
第二言語習得論(SLA)を学ぶためのおすすめ本・書籍 3選
論文を1つずつ読んでいくわけにはいかないと思いますので、書籍から重要な部分を体系的に学んでしまうのが良いと思います。
ここでは私も実際に読んだ本の中から、よかったものを3冊紹介してみたいと思います。
1冊目、2冊目は読んでおくと良いと思います。
3冊目は、より深く知りたくなったら手に取ると良いでしょう。
英語教師のための第二言語習得論入門
英語教師向けに書かれた本ですが、第二言語習得とはどういうものなのか?というのを体系的に知るためにはとてもおすすめな一冊。
まずはこちらを読んで基礎知識をつけると良いでしょう。
第二言語習得論に基づく、もっとも効率的な英語学習法
大人のビジネスパーソン向けに、第二言語習得論をベースにした英語学習法が記されている書籍。
第二言語習得論を実際の学習方法に落とし込んでいるので、より具体的にどのように学んでいけば良いのかの参考になります。
自分自身の勉強法を定める時の参考にもなるでしょう。
もちろん、良さそうだと思えばそのまま採用し、実行するというのも良いでしょう。
外国語学習の科学―第二言語習得論とは何か
著者も同じですし、1冊目に紹介した「英語教師のための第二言語習得論入門」と内容はかぶります。
「英語教師のための第二言語習得論入門」を読んだ後、もっと深く知りたい、色々学びたいと思った時に、知識を補足する意味で手に取ってみても良いでしょう。
第二言語習得(SLA)関連キーワード
詳しくは上記の本に任せたいと思いますが、それだとこの記事も微妙な感じになってしまいます。
さわりだけでもという事で、SLA関連の重要キーワーワードを並べてみましょう。
言語転移
外国語学習では、必ず母語の影響を受けます。
この「母語が影響する」という現象ことを言語転移といいます。
プラスの影響を与えることを「正の転移」、マイナスの影響を与えることを「負の転移」と言います。
例えば、韓国語と日本語は文法がとても似ています。
日本人が韓国語を学ぶ時、日本語の文法ルールを適用すると、有利に学習を進めることができます。
これは、正の転移と言えます。
2つの言語が似ていれば似ているほど、正の転移が多くなり、習得は容易になります。
ヨーロッパの人々が第二言語として英語の扱いに長けているのは、それぞれの母語と英語が似ており、言語間距離が小さいからというのも理由の1つでしょう。
逆に、アジア圏の言語と英語は距離が遠いので、習得難易度はヨーロッパ圏の人と比べるとあがります。
臨界期仮説
第二言語の習得において、ある年齢を越えるとネイティブスピーカーと同様の言語能力を身に付けるのは不可能である、ということをいった仮説。
70年代、80年代の研究の結論としては「Orler is faster, younger is better」。
これが意味するのは「大人は認知能力が子供に比べて高いので、学習が早い。一方、子供が幼少期に外国に移り住むなどした場合は、そのまま滞在すれば母語話者と同程度までになれる」ということです。
このことを考えると、大人になってからネイティブレベルになることを期待するのは無理そうなので、やめたほうが良さそうです。
ある一定のレベル(仕事で使えるetc.)を決めて目指す方が無難でしょう。
また「仮に子供をネイティブレベルにしたい」というような希望があるなら、幼少期にネイティブ環境でネイティブ言語を使わざるを得ない環境に身を置かせるというのが現実的な手段でしょう。
外国語学習に成功する学習者の特徴
- 若い
- 母語が学習対象言語に似ている
- 外国語学習適性が高い
- 動機付けが強い
- 学習法が効果的である
1と2と3については、今更どうしようもないので、4と5を最適化していくしか無いでしょう。
インプット仮説(理論)と自動化理論
言語習得に関する、2つの主要な考え方のこと。
これは、英語学習というか、第二言語習得論(SLA)において極めて重要な部分になります。
詳細は下記のとおりです。
インプット仮説(理論)
言語学者のクラシェン(Stephen Krashen)がとなえた仮説。
聞く、読むといったインプットにより言語習得は起こるという考え方。
母語(L1)の習得にも、第二言語(L2)の習得にも効果があります。
また、この際、言語習得レベルを「i」とすると、「i+1」という、現在のレベルより少しレベルの高い程度の、理解可能なインプットをすることが第二言語の習得に重要だと述べています。
言語習得は根本的には音声や文字を意味に結びつけることができなければなりません。
よって、いかに意味理解を保証するのかというのが重要となります。
視覚情報や、背景知識を使うのも有効な手段です。
このインプット理論、つまりは学習時の大量のインプットは、言語習得において、かなり重要だと第二言語習得では言われています。
大量のインプット学習により、予測文法力がつく
大量のインプットを積むと「Tom gave him ...」のような文章がくると、...に来るのは名詞だろうとか、どんな単語(book、the ticketなど)だろうなど、無意識に瞬時に予測できるようになります。
これを「予測文法力」といい、英語の理解には非常に重要です。
特に、リスニング時など高速に英語を処理しないといけないような場合、この予測文法力が重要となります。
予測文法力をつけるのに大量の英文のインプットが必要で、それは英語習得にとても重要です。
自動化理論
最初に明示的知識を身につけ、それを練習することによって、徐々に自動的に使えるようになるという理論。
授業で三単現のsをまず学び知識として身につけ、それを練習すれば使えるようになるでしょう、という考え方です。
複雑な言語ルールを全て明示的知識として習得するのは不可能なので、この理論だけでの言語習得は難しいので、理論としては破綻しています。
ただし、それでもある程度は有効です。
母語(L1)の習得にはあまり関係ないですが、第二言語(L2)の習得に関してはある程度有効です。
アウトプットの必要性
上記で紹介した白井恭弘氏の本によると「大量のインプット + 少量のアウトプット」の組み合わせが言語習得には良いようです。
例えば、母語と異なる言葉のテレビを見て外国語を習得した子供は、外国語を聞き取ることはできるものの上手く話すことができません。
つまり、大量のインプットだけした場合でアウトプットがない場合ですね。
このような人を「受容的バイリンガル」と呼びます。
受容的バイリンガルの例
例えば、日本人夫婦が駐在でアメリカへ行き、子供がアメリカで育った場合を考えてみましょう。
子供は学校に行くようになると、主要なコミュニティは学校になります。
もちろん学校ではみんな英語で話します。
そのうち、英語が子供にとっては主要な言語になります。
家で日本語で話しかければ理解はできますが、そのうち子供は英語で返事をするようになります。
そして、そのうち日本語は聞いたら分かるが、話せない言語になってしまいます。
つまり、言語の習得には大量のインプットが重要ではありながらも、少量のアウトプットも大切という事になります。
まあ「TOEICスコアだけが重要!話せなくても良いです」みたいな人はアウトプット不要かもしれませんが、どうせ英語を勉強するなら普通は使えるようにもなりたいですよね。
またアウトプットには「自分が英語で言えない事、つまりは文法や単語の知識が不十分な部分を確認する」という意味もあります。
インプットに加え、アウトプット学習も少量で良いので行うと良いでしょう。
アウトプット方法の確保手段
外国人の多いバーに行ったり、海外出身の同僚や留学生と話す機会が持てればよいですが、日本に住んでいるとなかなかそうもいきません。
そういった場合は「オンライン英会話」を使うと良いでしょう。
毎日20-30分話しても月額5,000円程度で、少量のアウトプットにはぴったりです。
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英語のアウトプット学習にはオンライン英会話がおすすめ【コスパ抜群】
第二言語習得論をベースにしているオンライン英会話としては「スパトレ」というものがあります。
参考スパトレを実体験した評判・口コミ・レビュー【オンライン英会話との違いは?】
さいごに
科学的に第二言語の習得のメカニズムについて、少しずつ明らかにされてきています。
この成果を、自分自身の英語習得に応用し、効率的に学んでいけると良いと思います。
今回紹介した本は、どれも読みやすくおすすめです。
ぜひ興味のある方は読んでみてください。